ドライブレコーダーという言葉が日本の市場に定着して大分経過しますが、AIドラレコの出現によって、この市場に革新が起きています。
今回はその中心にある製品、次世代型AIドラレコ「Nauto(ナウト)」を販売している会社「ナウトジャパン」の井田社長(以下、井田)に取材をしてきました。
当社でもNautoを販売開始して2年の歳月が流れましたが、兎に角すごいんですよ!
ドライバーや挙動に関しての画像認識精度が驚くほど優れているんです。
Nautoの高度な技術背景から、ナウトジャパン強いては、アメリカ本土にある親会社「Nauto」の企業文化、考え方に至るまで根掘り葉掘りインタビューしてきました。
改めまして、今回のブログ担当、(株)タイガー井上(以下、井上)がインタビュアーを務めさせていただきます!
- ナウトジャパン 井田社長に聞いてみた!
- Nautoの企業文化や考え方
- Nautoってどんな製品ですか?
- 日本とアメリカのニーズ違いとは?
- NautoのAIを支える6億Kmの走行データについて
- Nautoはどんな会社に売れていますか?
- 自動事故レポートはどのように開発されたのか?
- Nautoの今後の展望について
ナウトジャパン 井田社長に聞いてみた!
【写真:ナウトジャパン代表取締役 社長 井田様】
井上:
我々も販売させていただいております「Nauto」ですが、まずは井田社長の人となりが知りたいので、どういった経緯でナウトジャパンを始めることになったのか、自己紹介を含めてお話いただけますか?
井田:
実は新卒の頃から現在に至るまで自動車に関わる仕事をしています。
はじめに入社した会社がトヨタで海外向けの商品企画、戦略を担当していて、主に南米向けの製品企画なんかをしていました。
自動車の仕事を通じてITやAIと自動車が近づいてくるのを感じて一念発起して退職、渡米した経緯があります。
アメリカでまず就職したのが、オンラインで中古自動車販売をしているスタートアップ企業でした。
アプリで中古自動車を発注、クレジットカードで決済、最終的に家まで購入した自動車が届くっていう、自動車のAmazon版みたいなサービスで全米のオペレーションの立ち上げを行いました。
この後、安全の方に軸足を変えて、ドライバーの安全の手助けをできるNautoに感銘を受けて入社したのがきっかけで、その流れで日本で法人を立ち上げて現在に至っています。
井上:
興味本位で伺いますが、自動車の中古販売からNautoへの転職されるまでにどのような心境の変化があったのでしょうか?
井田:
実は自動車の中古販売をしていた企業が倒産しまして(笑)、ただその過程で重要な気づきがありました。
自動車の販売に関してはレガシーな部分があるけど、自動車の性能はアメリカ製、韓国製、日本製でほとんど差がなくなってきています。
自動車を販売する上で性能に差がないんだったら、もっとサービスとして付加価値をつける。例えば「ITで無駄を省くとみんなが得する」みたいなところがあるって気づいたんです。
同じく、運行管理、安全管理などでも人間の力や気合いに頼っている部分が大きく、ITやAIの力でよりよくできる余地があると思ったのがきっかけでした。
Nautoの企業文化や考え方
井上:
折角なので、アメリカの親会社「Nauto」の企業文化とか、理念を伺いたいと思うんですがよろしいですか?
井田:
実はNautoのCEO ステファン…というのですが、彼がニューロンサイエンス(神経科学)の博士号を持っているんですよ。
そこからコンサル業を経て、2015年に起業したのがNautoなんです。
ステファンはマッキンゼーという会社で半導体のコンサルもしていたのでハード(機械)も、とても詳しいんです。
彼は安全と安心をライフワークとして考えた時に、人間を安全にしていくことを業界のテーマにしたら……、一旦このくらいにしておきます。
――(※編集部:何かステファン氏については語りつくせない魅力があるらしく……。今回は割愛して改めて伺ってこようと思います)
元々Nautoは彼の家のガレージから始まって、思いに賛同する人間が沢山集まってできた会社なんです。
そして特長的なのは、社員の比率が圧倒的に技術者が多いことです。
井上:
エンジニアが沢山いるの羨ましいです(笑)
AIを理解して開発をしているエンジニアが日本では少ないと言われている中で、貴社が他社との差別化が明確にできているのはしっかりした技術を持ったエンジニアの存在がかかせないということですね。
Nauto(ナウト)ってどんな製品ですか?
井田:
一言でいうとAI搭載ドラレコです。…そういうとハードウェアに目が行きがちなんですが、
ドラレコに搭載したエッジAIと運行管理のプラットフォームで継続的な指導で安全運転教育に使ってもらうためのソフトウェアがNautoの特長なんですよね。
ハードウェアには高精度なAI搭載していて、複数のシナリオ(携帯電話、シートベルト、わきみ、喫煙など)を並行で処理を行いドライバーへの行動変容(運転を見直す)を起してもらうことを促す製品です。
井上:
ありがとうございます。Nautoで一番凄いのは特に顔の認識精度ですよね。
いろんな車があるので、ドライバーを上から映す形になっても「うつむき」「よそ見」を検知できるのは他社のAIドラレコとの決定的な違いかな…と思うのですが、どうやってこの高精度を実現されているのでしょうか?
井田:
物体映像の認識、前のシーンから次のシーンへ何が変わったのかを見ています。まず画面全体の認識をして、人がどういう動きをしているのかを認識しています。
それにより、人間の目のように判定できるのが特長ですかね。
井上:
当社も通信型ドラレコを開発・販売しているので分かりますが、凄い技術力だと思います。
日本とアメリカのニーズ違いとは?
井田:
沢山あります。どこから話そうかな…
井上:
代表的なところで3つくらいどうでしょうか?
井田:
そうですね、3つ…まず当たり前ですが言語が違うこと、右ハンドルと左ハンドルの違いですかね。
座席が逆でもスマホはどちらの国の人も右手で操作するんですよね。だから、単純に左右反転しているわけではないというのが難しかったですね。
他にも、交通標識や文化への対応といったローカリゼーション(その国特有の言語や文化、法令に合わせたソフトウェアの改修のこと)は大変でしたね。
後は味付けの部分ですね。検出の基準や定義などは日本向けに大きな変更を行なっています。
例えば、交通事情や環境などによって、許容される車間時間や運転方法などは変わってきます。日本の市場に合わせた適切な調整を行なっています。
また、日本のお客様はわき見運転や急制動などもリスクが低いものであっても確認して指導したいというニーズをいただいているため、そういった要望にもお答えできるように調整しています。
井上:
なるほど、確かに日本は自動車と自動車の車間がギュウギュウになりやすい傾向がありますもんね。
井田:
最後は販売戦略的なところですが、日本ではドラレコ、通信型ドラレコの普及が進んでいる時期に参入しています。
逆にアメリカは実はドラレコの普及が進んでいないので、(Nautoが)1台目のドライブレコーダーということが多いんですよ。
日本ではドラレコが一般的なので危険挙動があればアラートが出るとか売り方に違いがでてきます。
井上:
意外ですね。ドライブレコーダーって日本・アメリカでほぼ同時に発明された製品の認識があったので、てっきりアメリカの方がドライブレコーダーは進んでいると思いました。
井田:
実はそうでもないんですよ。
アメリカでタクシーをよく使うのですが、ドラレコがついている車両をそう多くはないです。
日本は逆にドラレコがついていないタクシーを探す方が難しいですよね。
実は市場としては日本の方が成熟しているのでその辺の差で販売戦略が違ったりしました。
NautoのAIを支える6億Kmの走行データについて
井上:
貴社と取引を始めた頃にNautoには6億Kmの走行データがあると聞いたんですが、今日貴社のHPを拝見したら11億4千万kmになっていましたね。
2年前と比べると倍近い走行距離になっていますが、どのくらいの地域と国でNautoは販売されているのでしょうか?
井田:
実はその距離の単位はマイルなのでキロメートルに直すと、約17億㎞の走行データがあります。
井上:
完全に勘違いしました(笑)
井田:
6億キロは2年前なんで、現在はその3倍くらいになっている計算です。
現在販売をしているのはアメリカ、日本、ヨーロッパ各国で展開していますね。
井上:
一番販売台数が多い国はどちらになりますか?
井田:
やっぱり、アメリカですね
井上:
あの、自動運転ができるまでに必要な走行データが数千億キロ必要…という話を貴社のブログで拝見したような気がするのですが…。
井田:
そうですね、当社のブログで書いたと思います。
実は自動車で完全に安全運転をAIに求める場合に必要な走行データは150憶km必要といわれています。
全然、まだ距離が足りないんですよね。
井上:
いや、でも既に10%を超えていますよね?
井田:
そうですね。でも、完全な自動運転で99.9%以上の安全保証しようと思ったら、3000億㎞は必要と言われています。
Nautoはどんな会社に売れていますか?
井田:
半分くらいは所謂プロドライバー…運送、物流、ラストワンマイルをやっている個配事業者等に販売しております。
後は普通のドライバーの方が所属する営業車、サポートカー、送迎バス…とか、半分くらいは車両をお持ちの会社であればなんでもですね。
共通しているのはどの会社も「安全意識」が高い会社という点ですね。
井上:
確かに貴社のHPの導入事例を拝見しましたが、(株)クラシアン様とか確かにプロドライバーではないけど、車両を沢山お持ちの企業の事例が沢山載っていましたね。
車両があれば業種業態を選ばずご利用になれる製品、という意味で画期的ですよね。
自動事故レポートはどのように開発されたのか?
井上:
貴社の仕組みで凄いなって思うのが、自動事故レポートですね。
カメラに映っているはずのない、車両の損傷具合がレポートで出てくるじゃないですか。
まだ、道路がWET(湿ってる)、DRY(乾いている)みたいな項目は理解できるんですけど、それが不思議で…。
映像に映っていない自動車の損傷ってどうやって学習(AIに)させたんでしょうか?
【図:自動事故レポートサンプル】
井田:
事故レポート機能って、他社さんのドライブレコーダーでも出力できるじゃないですか。
例えば、時速30㎞/h以上の速度でぶつかった場合とか、一定の閾値を超えたらとか…。
でも、これって誤検知も多いってお客様からよく伺っています。
当社の自動事故レポートは新しい試みで他メーカーさんと違うのは、まず0.65G以上の衝撃があった動画やデータをクラウドに送信して、詳細な解析ができるクラウド側のAIで事故かどうかを解析にかけます。
例えば、シートベルト装着の有無、わきみ運転したか、急ブレーキをしたか、道路の状態…などの判定に加えて、Gセンサーの値から過去の事故データと比較をして、このくらいの衝撃ならこのくらいの損傷…っていうのをレポート化しています。
大体、1時間以内に事故レポートをお客様に通知できるようにしています。
井上:
なるほど…背景にあるデータ量の凄さが伝わってきますね。
Nautoの今後の展望について
井上:
では、最後の質問です。喫煙検知やシートベルト未装着検知など次々に新しい機能がリリースされていますが、今後どういった機能が予定されておりますか?
井田:
今後は指導についてフォーカスした機能を出そうと思っています。
危険運転が上がってきたとして、どの人をどのように指導するべきかメモをつけることで継続的な指導ができるようなソフトウェアにしていきたいと思っています。
他にも事故を減らせる可能性が高いものから優先順位をつけて開発をしています。
例えば最近であれば、一時不停止、バック中の事故が多いとよく伺うのでそういったものにプライオリティをつけて開発していきたいと思っています。
井上:
まさに安全に配慮した自動車事故を起こさないための技術力、企業文化が理解できました。
本日はありがとうございました。
最後に余談ですが、井田社長のご趣味はダイビングと料理なんだそうです。
「どんな料理をつくるんですか」と聞くと「生姜焼きとか…」
意外と普通に和食なんですね…洋食かと思いました。
…と意外な一面も伺えて充実した取材になりました。
井田社長、お忙しい中ありがとうございました!
ナウト製品について詳しく知りたい方は以下から資料がダウンロードいただけます。