ナフサ問題は、価格に関しては少し落ち着いてきました。
「これで一安心!」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。
ただ、運送会社にとって今回の出来事は、単なる“ナフサ価格の問題”で終わらせてしまうのは少し危険です。
ナフサ問題どうなる?運送会社が今こそ見直したいコスト対策
ナフサは、プラスチック製品や合成ゴムの原料となる石油製品です。
運送業でいえば、タイヤや自動車部品、梱包資材、物流資材などにも関係しています。
つまり、ナフサ価格の上昇は石油業界だけの話ではなく、気づかないうちに運送会社のコストにも影響してくる可能性があります。
実際、ナフサ価格は1年前の約8.6万円から、2026年6月時点では1トンあたり約11.6万円まで上昇しました。 (参照:TRADING ECONOMICS「ナフサ – 価格 – チャート – ヒストリカルデータ – ニュース」)
今回の問題はひとまず落ち着きそうですが、運送業を取り巻くコスト上昇はナフサだけではありません。
軽油価格、タイヤ代、修理費、部品代、人件費など、多くの費用がここ数年で上昇しています。
今回のような価格変動が起きたとき、燃料サーチャージを適切に導入し、自社の原価を把握できている会社であれば、影響を確認しやすくなります。
「どの費用が上がっているのか」
「今の運賃で利益は残るのか」
こうした点を数字で確認できるからです。
一方で、原価が見えていないと、価格が上がるたびに対応が後手に回りやすくなります。
大切なのは、値上がりが終わりそうか、価格が落ち着きそうかに一喜一憂することではありません。
コストが上がったときに、すぐ数字で確認できる状態をつくっておくことです。
そこで改めて確認したいのが、次の3つです。
・燃料サーチャージが、今の軽油価格に合っているか
・タイヤ代・修理費・人件費など、燃料費以外のコストも把握できているか
・案件ごとに、今の運賃で利益が残っているか
大切なのは、自社のコストを数字で把握することです。
そして、必要に応じて運賃や料金を見直せる状態にしておくことです。
今回は、ナフサ問題をきっかけに、運送会社が今あらためて確認しておきたい「燃料サーチャージ」と「適正原価」について、わかりやすく整理していきます。
燃料サーチャージとは?請求金額の考え方も整理
まず、「燃料サーチャージとは何か?」というところから整理していきましょう。
燃料サーチャージとは、簡単にいうと、燃料価格が上がった分を、運賃とは別に調整する仕組みです。
たとえるなら、高級なお寿司屋さんの「時価」に少し似ています。
お寿司屋さんでは、その日の魚の仕入れ価格によって値段が変わることがありますよね。
マグロやウニの仕入れ値が大きく上がれば、お店側も価格を調整しなければなりません。
「いつも同じネタなんだから、値段もずっと同じで!」
……と言われたら、お店側はなかなか大変です。いや、かなり大変です。
運送業の燃料サーチャージも、考え方としてはこれに近いものです。
運賃そのものは、荷物を運ぶための基本料金として決められます。
しかし、軽油価格は市場の動きによって変わります。
同じ距離・同じ荷物を運んでも、軽油価格が上がれば運送会社の負担は増えます。
その増えた燃料費を、通常の運賃とは別に調整する仕組みが、燃料サーチャージです。
ここで注意したいのは、燃料サーチャージは「運賃の代わり」ではないという点です。
実務上、運送会社が請求する金額は、 運賃 + 燃料サーチャージ + 料金・実費など という形で考えるのが近いです。
運賃は、荷物を運ぶこと自体の対価です。
一方、燃料サーチャージは、軽油価格の変動分を調整するためのものです。
さらに、荷待ち時間料、積込み料、取卸し料、附帯作業料、高速道路料金、フェリー代などが別途発生する場合もあります。
燃料サーチャージはあくまで燃料代の上昇分を補うためのものです。
タイヤ代、修理費、部品代、人件費、荷待ちや荷役作業の負担まで、まるっと回収できるわけではありません。
ここを混同すると、「燃料サーチャージを入れているのに、なぜか利益が残らない」という状態になりやすくなります。
〇燃料サーチャージはいくら必要?軽油価格から計算してみる
では、実際に燃料サーチャージはどれくらいの金額になるのでしょうか。
直近の軽油価格は、資源エネルギー庁の石油製品価格調査で、2026年6月8日調査・6月10日公表の全国平均が158.8円/Lとなっています。
令和6年の標準的運賃見直しでは、燃料費・燃料サーチャージの基準価格として軽油120円/Lが示されています。
この基準で考えると、直近価格との差は、158.8円 − 120円 = 38.8円/L です。
燃料サーチャージの基本的な考え方は、以下のとおりです。
走行距離 ÷ 燃費 × 軽油価格上昇分
たとえば、4t車の燃費を4.5km/L、10t車の燃費を3.25km/Lとして計算すると、100km走行した場合の燃料サーチャージは、4t車で約860円、10t車で約1,200円前後がひとつの目安になります。
「100kmでそれくらいなら、大したことないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、運送業は1回走って終わりではありません。
毎日、毎便、毎月積み上がっていきます。
たとえば、4t車が1日300km走行し、月22日稼働すると、燃料サーチャージの目安は年間で約68万円。
同じ条件で10t車の場合は、年間で約95万円です。
つまり、軽油価格の上昇分を適切に運賃へ反映できるかどうかで、年間数十万円から100万円近い差が生まれる可能性があります。
だからこそ、
・燃料サーチャージを導入しているか
・現在の軽油価格に合っているか
・得意先に説明できる根拠があるか
・基準価格や計算方法を整理できているか
を確認しておくことが大切です。
なお、独自に燃料サーチャージを設定・変更する場合は、原則として地方運輸支局へ「運賃料金設定(変更)届出書」を提出する必要があります。
一方、令和6年告示の「標準的な運賃」を適用する場合は、燃料サーチャージが告示の中で規定されているため、届出書類の提出は不要とされています。
自社がどちらに当たるのか、事前に確認しておきましょう。
さらに詳しい計算方法や届け出の流れについては、以下のブログで詳しく解説しています。
気になる方は、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
〇燃料費の次に見るべき、運送会社のコストとは?
燃料サーチャージは、燃料費の上昇分を調整するために有効な仕組みです。
しかし、運送会社のコスト上昇は、燃料費だけではありません。
たとえば、次のような費用も上がっています。
・タイヤ代
・修理費
・部品代
・保険料
・車両価格
・人件費
・点検・整備費
こうして並べてみると、なかなかのフルメンバーです。
「値上がりオールスターズ」と呼びたくなる顔ぶれですね。
燃料費の穴をふさいでも、修理費やタイヤ代、荷待ちや荷役の穴が開いたままだと、利益は少しずつ減っていきます。
つまり、燃料サーチャージだけで安心するのではなく、会社全体のコストを見直すことが大切です。
そこで重要になるのが、「適正原価」という考え方です。
適正原価とは?運送会社が利益を守るための基本
適正原価とは、簡単にいうと、「その仕事に、実際どれだけの費用がかかっているのかを把握すること」です。
たとえば、同じ売上5万円の配送でも、
・原価が4万円なら、利益は1万円
・原価が4万5千円なら、利益は5千円
となります。
その差は、1回あたり5,000円です。
同じような案件を1日1件、月22日稼働で受けている場合、
5,000円 × 22日 = 11万円
の差となります。
さらに年間では、
11万円 × 12か月 = 132万円
です。
1件ごとの利益差は小さく見えても、積み重なると年間で100万円を超える差になる可能性があります。
これが、いわゆる「走っているのに残らない問題」です。
運送業では、なかなか笑えないやつですね。
適正原価を考えるときは、次のような点を確認します。
・この案件は利益が出ているか
・修理費や整備費が増えすぎていないか
・荷待ち時間や荷役作業の負担を考慮できているか
・高速道路料金や附帯作業費をきちんと請求できているか
・今の運賃で、安全管理や車両整備に必要な費用まで確保できているか
大切なのは、「なんとなく苦しい」で終わらせないことです。
どこに、どれだけ費用がかかっているのかを見える化することで、
・今の運賃で利益が残るのか
・見直すべき案件はどれか
・燃料サーチャージは適切か
・得意先へ説明すべきコストは何か
といった判断がしやすくなります。
改正トラック新法で注目される「適正原価」
適正原価が注目されている背景には、2025年に公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」および「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」があります。
この記事では、これらをまとめて「改正トラック新法」として説明します。
これまでの運送業界では、
「うちの方が安く受けますよ!」「仕事がなくなるくらいなら、多少無理してでも受けます」
といった価格競争によって仕事を獲得するケースも少なくありませんでした。
もちろん、仕事を確保することは大切です。
ただ、必要なコストを下回る運賃が続くと、どこかに無理が出ます。
少し極端な例ですが、実際には10万円かかる仕事を「8万円でやります」と受け続けたらどうなるでしょうか。
1回あたりの差額は2万円です。
一見小さく見えても、月20回なら月40万円、年間では480万円の差になります。
つまり、必要なコストを下回る運賃で仕事を受け続けると、年間で数百万円規模の利益が失われる可能性があります。
その不足分は、どこかで無理をして埋めることになります。
そしてその無理が、ドライバーの負担増、車両整備の後回し、安全対策の不足につながってしまう可能性があります。
〇適正原価を下回る運賃は見直しへ
そこで改正トラック新法では、国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃・料金の制限が予定されています。
簡単に言うと、「必要なコストを下回るような安すぎる運賃は見直していきましょう」という流れです。
これからは、
・この運賃が必要な理由
・なぜこの料金設定になるのか
・どのコストが上がっているのか
・その仕事にいくら原価がかかっているのか
を、数字で説明できることが重要になります。
適正原価の把握は、単なる計算作業ではありません。
制度変化に対応し、これからも安定して事業を続けていくための重要な準備でもあります。
運送会社が今日から始めたいコスト確認の基本
では、運送会社は何から始めればよいのでしょうか。
いきなりすべてを完璧に管理しようとすると大変です。
まずは、次の3つから始めてみましょう。
1毎月の軽油代を確認する
まずは、毎月の軽油代を確認しましょう。
見るポイントは、
・軽油価格
・給油量
・月ごとの燃料費
です。
軽油代は、運送会社の原価に直結します。
毎月どれくらい増えているのかを確認するだけでも、燃料サーチャージの見直しに役立ちます。
2修理費やタイヤ代をまとめる
次に、修理費やタイヤ代をまとめてみましょう。
あとから確認すると、
「この車両、思ったよりお金がかかっているな」
と気づくことがあります。
車両ごとに費用を見られるようにしておくと、買い替えや整備計画の判断にも役立ちます。
3案件ごとの利益を確認する
最後に、案件ごとの利益を確認しましょう。
確認したいのは、次のような点です。
・この案件は利益が出ているか
・走行距離に対して運賃は合っているか
・荷待ち時間や荷役作業の負担が大きすぎないか
・高速道路料金などの費用を含めても利益が残っているか
売上だけを見ると問題なさそうに見えても、原価を引くと利益がほとんど残っていない場合もあります。
「走っているのに、なぜか残らない」
という状態を防ぐためにも、案件ごとの収支確認は大切です。
紙やExcelだけでは限界?原価管理を見直す方法
ここまで読んで、
「管理することが多いな……」
と思った方もいるかもしれません。
実際、紙やExcelだけで、原価管理や車両管理をすべて行うのはかなり大変です。
軽油代、修理費、タイヤ交換履歴、車両ごとの経費、案件ごとの収支……。
見るべき数字は多く、しかも毎月積み上がっていきます。
そこで、原価管理やコスト確認を進める方法の一つとして、システムを活用するという選択肢があります。
運送会社では、請求や配車、日報管理などで日々さまざまなデータが蓄積されています。
せっかく入力したデータですから、請求業務だけで終わらせるのではなく、原価管理や収支確認にも活用できると便利です。
たとえば、
・車両ごとの燃料費や経費を確認する
・案件ごとの売上や利益を把握する
・得意先ごとの運賃や請求内容を管理する
・過去の運行実績や運賃データを確認する
・売上や経費の推移を分析する
といったことができれば、燃料サーチャージや適正原価を検討する際の判断材料になります。
ちなみに、弊社の運送業向けシステム「トラックメイトPro5」でも、日報や請求業務で使用したデータを活用しながら、売上や経費、案件ごとの収支などを管理することができます。
また、燃料サーチャージ算出・試算機能も搭載しているため、軽油価格の変動に応じた運賃管理にも役立ちます。
燃料サーチャージ算出・試算機能では、条件を設定することで、距離制運賃・時間制運賃それぞれの燃料サーチャージ額をシミュレーションできます。
車両重量に応じたサーチャージ額も確認できるため、
・今の軽油価格でどれくらい上乗せが必要か
・距離制運賃ではいくらになるか
・時間制運賃ではいくらになるか
・車両ごとにどれくらい差が出るか
といった確認に役立ちます。
「燃料サーチャージを設定したいけれど、計算が面倒……」
という場合にも、試算のたたき台を作りやすくなります。
とはいえ、
「燃料サーチャージの届出書って、どう作ればいいの?」
と思う方もいるのではないでしょうか。
トラックメイトPro5の燃料サーチャージ算出・試算機能では、運賃料金設定(変更)届出書のサンプル出力にも対応しています。
具体的には、次のような書類の作成に役立ちます。
・運賃料金設定(変更)届出書
・燃料サーチャージの適用方法
・距離制・時間制の運賃上昇額一覧
届出書をゼロから作るのは、なかなか大変です。
ひな形となるサンプルがあれば、書類作成の負担を減らしやすくなります。
ただし、運賃料金設定(変更)届出書は、運輸支局によってフォーマットが異なる場合があります。
出力した届出書をベースに、各支局の様式に合わせて確認・調整するのがおすすめです。
さらに詳しく話を聞きたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ:燃料サーチャージと適正原価でコスト上昇に備えよう
ナフサ価格や原油価格の変動は、遠いニュースのように見えて、実は運送業のコストにもじわじわ影響しています。
軽油代だけでなく、タイヤ代、修理費、部品代、梱包資材費など、さまざまな費用が上がる中で、運送会社に必要なのは、コストを正しく把握することです。
まずは、
・燃料サーチャージは今の軽油価格に合っているか
・燃料費以外にどんなコストが上がっているか
・今の運賃で利益が残っているか
を確認してみましょう。
いきなり完璧でなくても大丈夫です。
軽油代を見る。
修理費やタイヤ代をまとめる。
案件ごとの利益を確認する。
そこからでも、十分スタートになります。
※ちなみに、弊社キャラクターのとらのすけも、ナフサの影響で白黒になってしまいました。
コストの波、キャラクター界にもじわじわ来ているようです(笑)
来月のブログまでには戻っていることを願いましょう…。


