業務前自動点呼の始め方 – 導入の準備からメリットまでの完全ガイド

業務前自動点呼の始め方 – 導入の準備からメリットまでの完全ガイド

1. はじめに:2025年8月スタート!業務前自動点呼で変わる運送現場

2025年8月、ついに国土交通省から「業務前自動点呼」に対応する認証機器の情報が公開されました。

「待ってました!」と喜んだ方もいれば、「え、点呼ってもう機械でできるの?」と驚いた方もいるでしょう。

これまでの点呼といえば、運行管理者がドライバーと直接顔を合わせて行う「対面点呼」 が当たり前でした。

点呼の様子

毎朝のように「体調は大丈夫?」「お酒は飲んでいない?」「携行品もった?」「今日の運行経路は把握してる?」と確認する、いわば “運行に臨むためのコンディション確認”です。

対面でのやり取りが当たり前だった点呼ですが、いまや機械がその役割を果たす時代に変わりつつあります。
まるで最新家電を買って、ボタンひとつで朝ごはんが完成するような便利さ。

逆に「本当に大丈夫?」と心配になるほどの進化です。

◆業務前自動点呼、2025年8月から本格スタート

この新しい流れは2025年8月から本格的に動き始めました。

複数のメーカーが続々と国交省の認証を取得し、導入を検討する運送会社も急増中。

まさに「点呼機器ブーム」が到来しています。

新しいスマホが発売されるたびに「そろそろ買い替えかな」と話題になるように、点呼の世界も今まさにアップデートの時期を迎えているのです。

とはいえ…

パソコンの前で悩む人

自動点呼って何をチェックしてくれるの?」「導入するにはどんな準備が必要なの?

多くの方が気になるのはここですよね。

この記事では、その疑問に答えるために業務前自動点呼の仕組み・メリット・導入条件・スムーズに導入するための流れをわかりやすく解説します。


2. 業務前自動点呼とは何か?導入前に知っておきたい基礎知識

ひとことで言えば、「ドライバーが出発前に必ず行う点呼を、国交省認定の機器で自動実施できる仕組み」です。

具体的には、以下の流れを自動点呼機器がまとめて実施します。

  • 本人確認(顔認証など)
  • アルコールチェック
  • 体温や血圧などの測定
  • 車両点検の記録
  • 運行管理者からの指示確認・乗務可否判断
  • 携行品(免許証・運行指示書等)の確認
ロボットがパソコンに向かっている図

ここで重要なのは、「国交省が認定した機器」であること。

だからこそ対面点呼と同じ法的効果を持ちます。

従来は運行管理者による対面点呼が原則でしたが、2025年4月の制度改正により条件を満たした機器を導入すれば「業務前自動点呼」を 「対面点呼と同等」と正式に認められるようになりました。

つまり、ただの便利グッズではなく、法律に裏打ちされた正規の仕組みなのです。
便利さに加え、コンプライアンス面でもしっかり戦えるのがポイントです。


【最初に押さえる三つのルール】

1. アルコール検知が出たら中止

… 再開はできません。再実施する場合は新しい点呼予定を作成し、最初からやり直します。

2. 体調異常は中断

… 運行管理者が安全と判断した場合のみ再開可能。運転者だけでの再開は不可です。

3. 中断から再開する際は生体認証で本人確認

… 中断から再開する際は生体認証で本人確認を行い、中断時点から続きが可能です。



【状況別の実務フロー】

◆アルコール検知が出たとき

  1. 端末が自動で中止
  2. 管理者へ連絡し、状況確認・代替手配
  3. 再実施は新規の点呼予定を作成し、最初から実施

◆体調異常のとき

  1. 点呼を中断
  2. 管理者が内容を確認(休憩・体調回復・代替手配の検討)
  3. 安全と判断できれば管理者が再開操作
  4. 生体認証で本人確認し、中断時点から続き

流れ自体はシンプルです。アルコールはやり直し、体調は確認して続き

現場で迷いがちなポイントを先に決め打ちにしておくと、朝の点呼がぐっとスムーズになります。

最後の判断は運行管理者(事業者)が行う

誤解しやすいのですが、「自動=丸投げ」ではありません。
アルコール反応や体調異常が出た場合は自動点呼が停止し、

  • 再開するか
  • やり直すか
  • 運行を見合わせるか

この最終判断は運行管理者(軽貨物は安全運行管理者を含む)が行います。

イメージとしては「カーナビ」に近いかもしれません。道案内はしてくれますが、渋滞を避けて回り道をするかどうかを決めるのはドライバー本人です。

カーナビを見ている男性

業務前自動点呼も同じで、基本的なチェックは自動化できても、最終的な判断は運行管理者に委ねられます。

ここを人任せにせず、体制として意思決定の基準と記録の残し方をあらかじめ決めておくことが、安心・安全と監査対応の両方に効いてきます。

「もっと詳しく知りたい!」という方は、こちらの記事もぜひご覧ください。


3. 業務前自動点呼の導入メリット5選注意点4つ

業務前自動点呼の導入を検討するときに、真っ先に気になるのはやはり

どんなメリットがあるのか?」と「注意すべき点は何か?」ですよね。

ここでは、現場と経営の両面で押さえておきたいポイントを整理しました。

◆業務前自動点呼のメリット5選

運行管理者の負担軽減

深夜・早朝・休日でも自動点呼が可能。
「朝4時から出勤して点呼…」なんて過酷なシフトから解放されます。
シフト調整の悩みも減り、人件費削減にもつながります。

チェック漏れ防止・法令遵守の強化

自動判定と記録で、記入忘れや確認漏れを防止
監査のときも「データがちゃんと残っている」安心感は大きな武器になります。

業務効率化とデジタル化推進

点呼簿はクラウドに自動保存。
紙の山や保管棚から解放され、会社全体のDX化をグッと後押しします。
まさに“点呼の新しいカタチ”です。

安全性の向上(健康起因事故防止)

体調異常やアルコール反応を自動で検知。
必要に応じて運行をストップでき、事故を未然に防ぐことができます。

非接触・感染症対策

対面のやり取りを減らせるので、感染症リスクも低減
時代に合った“安心の仕組み”を作れます。

◆業務前自動点呼の注意点4つ

異常時の最終判断は運行管理者

異常検知時には機器が停止し、運行可否は運行管理者が決める必要があります。
詳細は国交省の業務前自動点呼機器 及び 業務後自動点呼機器の要件をご確認ください。

通信・機器トラブルへの備え

ネットワーク障害や機器不具合が起きても、すぐに対面点呼や遠隔点呼に切り替えられる体制が必要です。

基準値設定の手間

導入前に運転者ごとの平常値(体温・血圧など)を約10日間収集し、基準値として登録する必要があります。

導入コストと補助金活用

導入費用は安くありませんが、補助金やリース制度を活用すれば負担を軽減できます。
すでに公募が始まっている制度もあるため、最新情報はこまめに確認しましょう。
詳しくは全ト協の補助金情報をご覧ください。

●まとめ:人と機械の役割分担がカギ

要するに、業務前自動点呼は「心強いパートナー」のようなものです。
多くの作業を肩代わりしてくれますが、ハンドルを握るのは人。

人と機械が役割を分担することで真価を発揮します。


4. 業務前自動点呼の導入に必要な3つの要件とは?

「業務前自動点呼をうちでも導入したい!」と思っても、残念ながらすぐにスタートできるわけではありません。

国土交通省が認定した機器を使う以上、いくつかの条件をクリアする必要があります。

◆導入に必要な条件

まず大前提として、自動点呼を始めるには国土交通省への届出(例:貨物自動車運送事業の場合)が必須です。

これを忘れて導入してしまうと、いきなりルール違反になってしまうので要注意です。

届出時には、以下のような資料の添付も求められます。

  • 非常時に対面点呼へ切り替えられる体制
  • 監視カメラの設置場所  ※監視カメラを使用する場合

そのため、申請準備の段階からチェックリストを作成しておくと、手続きをスムーズに進められます。

さらに、導入を進めるには 「機器」「施設環境」「運用体制」 の3つをしっかり整えることが欠かせません。

機器の要件

1. 機器の要件

  • 国交省認定の自動点呼機器(アルコール検知器・バイタル測定・顔認証など)を使用すること
  • 体温・血圧を測定し、平常値と比較して自動で安全運転の可否を判定
  • アルコール検知 → 中止 → 代替手配・状況確認。
    再実施する場合は新規の点呼予定で最初から(続き再開は不可)。
  • 体調異常を検知したら中断 → 管理者に通知 → 管理者が安全確認できた場合のみ再開(運転者の単独再開不可)。
  • 車両の日常点検結果を記録・保存(改ざん不可、原則1年間保存)
施設・環境の要件

2. 施設・環境の要件

  • 点呼中または終了後に、カメラで運転者の全身を明確に確認できること(なりすまし防止・証跡保存用)
  • 通信トラブルを避けるため、安定したネットワーク環境を整備すること
運用体制の要件

3. 運用体制の要件

  • 運行管理者が事前に点呼予定を入力し、結果を確認できる仕組みを構築
  • 健康状態や点検で異常が出た場合に、即時対応できる体制を整備
  • 点呼時には必ず運行管理者から指示を伝達点呼予定作成時に設定必須
  • 異常発生時は、対面点呼や遠隔点呼に切り替えるフローを準備

たとえるなら、これは「家を建てる前に基礎を固める」作業です。
どんなに立派な家でも、基礎が弱ければ安心して住めませんよね。

業務前自動点呼も同じで、ルールと体制という“土台”をしっかり固めてこそ、安心して導入できるのです。


5. 導入にはどれくらいかかる?業務前自動点呼導入の手順と期間目安

業務前自動点呼を導入したい!」と思っても、残念ながらすぐに始められるわけではありません。

導入には段階的な準備が必要です。

2025年8月に国土交通省から認定機器が公表され、ようやく実践導入が可能になりましたが、実務面では慎重な進め方が求められます。

◆業務前自動点呼 導入手順

導入拠点の決定

どの営業所・どの便から導入するかを決めます。
深夜や早朝など負担が大きい拠点から始めると、効果を実感しやすいです。

機器の選定

「認定されているから安心!」と丸投げするのは危険です。
認定機器には共通機能(顔認証・アルコールチェック・体温・血圧測定・日常点検記録など)がありますが、実際の操作性や使いやすさは製品によって異なります。
“何ができるか”を把握して選ぶことが重要です。

国土交通省(所管運輸支局長)への事前届出

開始予定日の約10日前までに届出が必要です。
非常時の切替体制やカメラ設置位置を示す資料も添付しましょう。
※届出期限や様式は必ず所管運輸局の案内に従ってください。

機器の納品・設置・初期設定

全身を映せるカメラの設置、安定した通信環境の確保、データ保存体制の準備が必要です。

機器設定・運用ルール策定

運用時間・点呼フロー・緊急対応ルールなどを運行管理規程として整備します。

従業員への研修と試験運用

ドライバーには操作手順を、運行管理者には異常時対応や切替フローを教育します。
さらに体温や血圧の平常値(目安10日分)をこの段階で収集します。

本格利用開始

いよいよ本格スタート。
導入直後はトラブル対応や改善点の洗い出しを行い、運用を安定させていきます。


◆導入までの期間

気になるスケジュール感ですが、最短でも3〜4か月は見ておく必要があります。
内訳は以下のとおりです。

  • 機器選定・納品:約1〜2か月
  • 設置・設定:約2〜4週間
  • 従業員研修と試験運用:約1〜2か月

※上記の期間はあくまでも目安です。

「来月からすぐ導入!」は難しいですが、今から準備を始めれば次の繁忙期には十分間に合います。


6. 導入を検討するなら今!業務前自動点呼のまとめ

業務前自動点呼は、安全性の確保と業務効率化を両立できる、物流業界にとって欠かせない新制度です。

導入には、国交省が認定した機器、安定した通信環境、そして明確な運用ルールづくりという3つの土台が必要ですが、仕組みが動き出せば運行管理者の負担軽減と安全性向上を同時に実現できます。

もちろん、初期投資のコストや現場教育の手間、システムトラブルへの備えといった課題はあります。

でも大丈夫。これらは計画的に準備を進めれば、しっかりと解決可能です。

まるで家を建てる前の基礎工事と同じで、少し時間をかけて地盤を固めておけば、その後は安心して長く使えます。

カレンダーのイラスト

2025年8月以降は認定機器の登場が進み、すでに多くの企業が導入を検討しています。
今後、業務前自動点呼が“新しいスタンダード”になるのは間違いありません。

補助金の活用や先行導入のメリットを考えると、導入準備を始めるならまさに今が最適なタイミングです。

やるなら今から

この小さな一歩が、未来の大きな安心と効率化につながります。

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